2025/08/18
矯正治療
「歯科矯正」と聞くと、多くの人が「見た目を良くする治療」というイメージを持たれるかもしれません。確かに、歯並びが整えば笑顔が美しくなり、自信も持てるようになります。しかし、矯正治療の本質は、それだけにとどまりません。実は、かみ合わせが整うことによって、全身の健康や体のバランスにも良い影響を与えるのです。
本記事では、歯科矯正がもたらす「審美性以外のメリット」、そして「信頼できる矯正医を選ぶポイント」について、さいたま市のくろさき歯科院長 黒崎俊一先生にお聞きしました。
はい。歯のかみ合わせは、食事や会話といった日常動作の基盤であると同時に、全身のバランスとも深く関係しています。
人間の頭の重さは成人でおよそ5〜6kg。これを支えているのが首や背中、そしてあごや歯です。噛み合わせは、体の土台と言えます。かみ合わせがずれていると、頭の位置も微妙に傾き、それを補正しようとして首・肩・背中の筋肉に負担がかかります。慢性的な肩こりや頭痛、猫背、顎関節症などの原因のひとつとして、かみ合わせの不正が関わっているケースは少なくないと思います。
さらに、かみ合わせの問題が足腰のバランスや姿勢にまで影響していると考えています。実際、スポーツ選手の中には、パフォーマンス向上のために歯科矯正やマウスピースを取り入れている方も多くいますね。
そうです。順に説明をしますね。
1. 咀嚼能力の向上
歯並びが整うことで、しっかりと食べ物をかみ砕くことができるようになります。これは胃腸への負担軽減にもつながり、消化吸収効率が上がります。特に成長期の子どもや、高齢者にとっては重要な要素です。意外かもしれませんが、高齢の方でも歯科矯正を希望する方もいます。当院でも、入れ歯と歯科矯正の治療を併用することもあります。
2. 虫歯・歯周病の予防
ガタガタした歯並びは、歯ブラシが届きにくく、汚れがたまりやすくなります。矯正によって清掃性が高まり、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。
3. 発音の改善
前歯に隙間があったり、出っ歯や受け口のような状態があると、サ行・タ行などの発音が不明瞭になることがあります。矯正により舌の動きや空気の流れが改善され、クリアな発音がしやすくなることもあります。
4. 顎関節への負担軽減
かみ合わせのズレは、あごの関節に不自然な動きを強いる原因になります。これが続くと、顎関節症を引き起こし、「口が開けにくい」「カクカク音が鳴る」「痛みがある」などの症状を招くこともあります。矯正によって顎関節の動きがスムーズになり、こうした不快症状が軽減する可能性があります。
その他にも、体の調子が整ったという患者様のご感想をいただくことがあります。
このような理由で高額になっています。
少し難しい問題ですね。歯科矯正を希望する方の多くは審美を目的としていますから、ニーズに合わせた訴求は大切でしょう。当院も審美を訴求する広告を出すこともあります。
やはり、大切なことは、矯正医を選ぶことだと思います。
歯科矯正は長期間にわたる治療であり、治療の質によって結果も大きく変わります。だからこそ、信頼できる矯正医選びはとても重要です。以下に選び方のポイントを紹介します。
1. 「日本矯正歯科学会」などの専門資格を持つ医師
矯正治療は、一般歯科とは異なる高度な専門知識と技術が必要です。日本矯正歯科学会の認定医や指導医などの資格を持つ医師は、一定の研修や実績を積んだプロフェッショナルである証です。資格を持たない歯科医師の場合は、症例数の多さが参考になると思います。
2. 咬み合わせまで重視しているか
矯正治療で「歯並びをきれいにする」ことだけを目的にしないことです。かみ合わせを考慮せずに歯を並べると、一見キレイに見えても、噛みにくかったり、顎関節に負担がかかってしまうこともあります。「見た目」だけでなく「機能」を重視する方針の医師を選ぶことが大切です。初回は無料もカウンセリングがあると思いますので、そこでかみ合わせについて質問をするといいでしょう。
3. 治療前の説明が丁寧でわかりやすい
矯正治療は、装置の種類、治療期間、費用、副作用など多くの情報を考慮します。患者様の疑問に丁寧に答えてくれ、無理な勧誘をしない誠実な医師であるかどうかを判断するといいでしょう。特に、治療期間の見立ては矯正医によって大きく違いますので、複数の歯科医院に相談することをおすすめします。
4. チーム体制や他科との連携が取れている
矯正治療には、場合によっては外科処置や歯周病や虫歯治療が必要になることもあります。こうした治療を矯正医が行うことは少ないので、矯正だけでなく、一般歯科、口腔外科、小児歯科など他の専門と連携できる体制があるクリニックだと、お口の状態が院内で共有できます。くろさき歯科に、虫歯や歯周病の専門医が在籍しているのはそのためです。
とてもいい質問です。歯を抜いてスペースを確保する「抜歯矯正」は広く行われており、特に歯列の重なりが強いケースでは有効な選択肢です。顎が小さかったり、骨格に問題がある場合は抜歯によってスペースを確保することで、口元やフェイスラインが整うことがあります。患者様のお口の状態を診断して術式は決定します。
歯科医師の中には、健康な歯は抜かないほうがいいという考えもあります。私も基本的にはこの考えに賛成です。「歯を抜かない矯正(非抜歯矯正)」で、顎の骨の成長を利用したり、歯列を広げたり、奥歯を後方に移動させるなどの工夫をしながら、できる限り歯を残して整える方法を選択します。
非抜歯矯正のメリットは、元々の口の機能を損なわずに歯科矯正ができる点です。くろさき歯科ではできる限り、非抜歯で矯正を行うようにしています。
正直、すべての症例に適応できるわけではありません。非抜歯で理想的なかみ合わせや審美性を得るには、非常に高い治療計画力と繊細な力のコントロール技術が求められます。
顎の骨の大きさや歯の大きさ、成長の余地、歯列のアーチ形状、口元の突出感などを総合的に判断し、歯を動かす方向や量をミリ単位で設計する必要があります。さらに、歯列を拡大するには、歯槽骨の厚みや歯肉の状態に対する深い知識も不可欠です。
「歯を抜かない矯正ができる」と謳うクリニックも増えていますが、見た目だけを整えてかみ合わせが不安定になったり、後戻りが早くなったりしては本末転倒です。そのため、非抜歯矯正を希望する場合こそ、矯正専門医の高度な診断力と経験が非常に重要です。
そうは言っても、治療前に矯正医の力量を見極めることはできませんから、検査の方法が参考になります。くろさき歯科では、歯科用CTを導入しています。インビザラインで矯正を行う際でも、口腔内スキャンとCTのデータを使うことで治療計画の精度が上がります。
このように、「歯を抜かない矯正」は魅力的な選択肢でありますが、適切な判断と高度な技術を要する治療でもあります。非抜歯・抜歯にかかわらず、患者一人ひとりの骨格や生活習慣に合わせた治療計画が立てられる医師に出会えるかどうかが、歯科矯正の成功の鍵となります。
その通りです。ある歯科医院で「抜く」と言われても、他の歯科医院では「抜かなくても大丈夫」と言われることもあります。非抜歯矯正は、骨格や歯列の状態によっては理想的な選択肢になりますが、どんな人にも万能な方法ではありません。矯正治療で最も大切なのは、「歯がしっかり噛み合う」「機能的で美しい」「後戻りしにくい」状態をつくること。そのためには、抜歯・非抜歯の判断を含めて、精密な診断と正確な治療計画が不可欠です。
歯科矯正は、単なる美容目的の治療ではありません。かみ合わせが整うことで、食事や発音、姿勢や体のバランス、さらには心の健康にも良い影響を与えてくれる、まさに「人生を変える」治療といえます。
「もう大人だから今さら矯正なんて…」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には大人になってから矯正を始めるかたはいらっしゃいます。目立ちにくいマウスピース型矯正装置なども普及しており、社会人でも歯科矯正に取り組みやすくなりました。
ご自身やお子さまの歯並びやかみ合わせに不安がある方は、ぜひ一度、矯正専門の歯科医にご相談ください。体のバランスを整える第一歩になるかもしれません。
・歯科矯正は審美性だけでなく、かみ合わせを通して全身の健康にも影響を与える。
・姿勢、肩こり、頭痛、顎関節の症状など、体のトラブルの背景にかみ合わせがあることもある。
・信頼できる矯正医は、見た目だけでなく「機能」まで考えた治療を行う。
・矯正治療をきっかけに、より健やかで前向きな人生を手に入れていただきたい。
Contact
お口の健康に関するお悩みや疑問を、ご相談ください。
くろさき歯科の専門家が親身になってお話を伺い、一人ひとりに最適な治療方法をご提案いたします。
お気軽にご予約ください。