2025/11/06
入れ歯治療
インプラント治療は「第二の永久歯」とも呼ばれ、失った歯を補う治療として広く普及しています。
しかし、どんなに優れた治療法でも、すべての症例がうまくいくわけではありません。
「インプラントを入れたのに噛みにくい」「痛みや腫れが続く」「すぐに外れてしまった」——。
このようなトラブルの相談はインプラント治療を行う歯科医院が増えるほど、増えていきます。
インプラント治療が一般化した今だからこそ、「失敗とは何か」「原因と対処法」「再治療の注意点」を知っておくことが重要です。
本記事では、インプラント失敗の実態と、患者が取るべき適切な対応について詳しく解説します。
「噛めない・痛い・腫れる・グラつく・見た目が不自然」—それは失敗の早期サインかもしれません。本記事は症状→原因→対処→再治療→保証・法的手段の順に、患者さんが今すぐ取れる行動を示します。
本記事の執筆者:別所諒
インプラントは高額な治療法であり、外科施術を伴うために、治療に踏み切るまでの悩むこともあるでしょう。テレビや新聞、雑誌などにはインプラントの広告が出され、ロードサイドにもインプラントの広告看板が設置されています。一般的になったからこそ、失敗しないようにインプラント治療には慎重になりたいものです。一口に「インプラントの失敗」といっても、さまざまなケースがあります。
多くの場合、機能的に問題がある場合と、審美的に満足できない場合に分けられます。インプラントの失敗についてまとめます。

インプラントが骨にしっかり結合していない場合、噛むと痛みやぐらつきが生じます。また、上部構造(人工歯)の噛み合わせが不適切だと、食事のたびに不快感が出たり、隣の歯に負担がかかったりします。違和感が即失敗というわけではありませんが、速やかに歯科医師に相談をしてください。
インプラント本体が折れたり緩んだりするケースもあります。骨との結合(オッセオインテグレーション)が不十分だと、数ヶ月〜数年後に脱落することもあります。こうした場合も、リカバリーができるので、速やかに歯科医師に相談をしてください。
手術後に感染を起こすと、歯茎の腫れや痛み、膿が出ることがあります。放置するとインプラント周囲炎を起こし、最終的にはインプラントが抜け落ちることもあります。
前歯のインプラントで「歯ぐきの高さが不自然」「左右のバランスが悪い」「金属が透けて見える」など、見た目に関する不満も多く聞かれます。また、かみ合わせを十分に意識していないインプラントの埋入は、左右のバランスを崩すこともあります。
ここまでインプラントの失敗について想定される内容を解説しました。失敗の多くはリカバリーが可能な内容です。しかし、リカバリーの方法を誤ったり、放置しておくと、深刻な状態になってしまうことがあります。対処は早くすることがポイントです。
そもそもなぜ、インプラントの失敗が起こるのでしょうか?失敗の理由を分類してみます。
インプラントは骨の量や厚み、咬み合わせの力の方向などを精密に分析して設計しなければなりません。CT診断が不十分なまま手術を行うと、骨が薄い部分に埋めてしまったり、神経や上顎洞を損傷するリスクが高まります。特に高齢者へのインプラント手術は慎重な診断が大切になります。
外科手術には高い精度が求められます。
血管損傷による出血、神経損傷による麻痺、ドリル操作による骨の熱壊死など、手技の差が結果に直結します。
マイクロスコープやガイドシステムを使うかどうかも成功率に大きく影響します。歯科医師の技術力は言うまでもありませんが、設備の充実度もインプラントの成功へのポイントになります。
滅菌が不十分な状態で手術を行うと、細菌感染のリスクが高まります。滅菌はインプラントに限らず、歯科医院としては基本的な管理ですが、多忙な歯科医院や滅菌装置の故障への対応が遅いなど、稀に対策が不十分な事態が起こっていることがあります。
また、術後に抗菌薬の管理や洗浄指導が適切でないと、インプラント周囲炎を起こす原因となります。
治療が成功しても、定期的なメインテナンスを怠ると失敗につながります。インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病菌による骨吸収は進行します。清掃不良や喫煙習慣、糖尿病などもリスク要因です。患者様の問題ではありますが、もともとも歯周病の治療が不十分なことも原因になります。
骨がもともと少ない、歯ぎしりが強い、全身疾患を持つなど、患者自身の条件によって成功率が下がることもあります。こうしたリスクは事前に説明があるはずですが、歯科医師のコミュニケーションを十分に取り、納得してから治療を開始してください。特に、複数の歯科医院でインプラントは難しいと言われたケースの場合、「できる」と言う歯科医師の根拠などを聞いておくと安心でしょう。
まずは埋入した医院に相談し、レントゲンやCTで状況を確認してもらいましょう。
一時的な炎症であれば抗生剤や洗浄で改善することもありますが、骨吸収が進んでいる場合はインプラントの除去が必要になることもあります。
インプラントが骨と結合していない可能性があります。
無理に使い続けると骨がさらに失われるため、早めの対応が必要です。
再埋入を行う際は、骨造成(GBRやサイナスリフト)が必要になる場合があります。
膿や出血がある場合は、インプラント周囲炎の可能性があります。
洗浄・レーザー治療・抗菌薬の使用で治ることもありますが、重度になると撤去が必要です。
いずれにしても、再治療が必要になることが多いため、同じ歯科医院で治療をするのか、別の歯科医院で治療をするのかは慎重に選択しなければなりません。
インプラントの治療をして、何らかにの不具合が出た場合、再治療になるケースがほとんどです。その際、気になるのは次がうまくいく確信と費用の問題でしょう。インプラント治療は自由診療のため、保証や補償の範囲は医院によって異なります。もちろん、明らかな医療ミスや過失がある場合、医院に対して再治療や返金を求めることが可能です。
不具合が出た際、他院で再治療を行う場合は、二重の負担になるので、最初にインプラント治療をした歯科医院とはきちんと話し合っておくことが大切です。
自由診療では同意書にリスクや保証条件が記載されるのが一般的です。ただし、完全な免責は認められません。内容に不安があれば、その場で質問し、必要なら持ち帰って検討やセカンドオピニオンをおすすめします。
以下は、実際の歯科医院で契約書や同意書に記載される代表的な条項例です(法的文面の参考としてご覧ください)。
インプラント治療は高度な医療行為であり、以下のようなリスクがあることを理解し、同意します。・手術部位の腫脹、痛み、出血、神経損傷、上顎洞損傷の可能性・骨結合が得られず、インプラントが脱落する可能性・経年的な骨吸収・歯肉退縮が生じる可能性・メインテナンスを怠った場合、インプラント周囲炎を発症し脱落する可能性
目的:患者に「失敗ゼロではない」ことを明確に伝え、想定外のトラブルを防ぐ。
当院は、適切な診断・治療を行いますが、治療結果を完全に保証するものではありません。また、咀嚼感や審美感の主観的満足度については個人差があるため、これを理由とした返金・再治療の請求には応じかねます。
目的:感覚的な不満(「噛みにくい」「見た目が気に入らない」)によるクレームを予防。
治療後も定期的なメインテナンスを受け、口腔衛生状態を良好に保つことが必要です。喫煙、夜間の歯ぎしり、糖尿病などの全身状態悪化によりインプラントが脱落した場合、医院は責任を負いません。
目的:メインテナンス不履行や生活習慣に起因する失敗を患者責任にできる。
治療後1年以内にインプラントが脱落した場合、当院が原因と認めた場合は無償で再治療を行います。ただし、外傷・感染・メインテナンス不履行・全身疾患の悪化など、患者要因による場合は対象外とします。
目的:保証期間を明示し、「医院の責任範囲」を限定する。
本治療契約は、結果の完成を約束するものではなく、歯科医師が医学的合理性に基づいた注意義務を尽くすことを目的とする準委任契約であることを理解し、同意します。
目的:請負契約(結果保証型)ではなく「準委任契約(努力義務型)」であることを明記しておく。
これにより、「結果が悪かった=契約違反」とされにくくなります。
本契約に関して紛争が生じた場合は、誠実に協議し、それでも解決しない場合は当院所在地を管轄する裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とします。
目的:訴訟が起きた場合に、医院所在地の裁判所で審理されるように設定できる。
このように、インプラントの治療はリスクを伴うものであることは、受ける側の私たちも理解をしておく必要があります。
だからと言って、患者様が泣き寝入りをする必要もありません。歯科医院側は「治療は適切に行われた」と言いますが、不具合を感じている場合は、必ず歯科医院に申し出ましょう。その際、注意したいのは「失敗を追求」することでなく、インプラントの治療を一刻も早く成功させることです。いきなり争う姿勢を見せることは好結果に結びつきにくいと思われます。歯科医院側が顧問弁護士を立てることもあるので、問題が大きく複雑になってしまいます。
歯科医院側が瑕疵について認めない場合は、次の手順で対応してください。
具体的な手順
カルテの開示に消極的であったり、費用を請求する歯科医院もあります。しかし、カルテの開示は患者様に権利があり、歯科医院には義務があるので、必ずカルテのコピーは入手してください。
そのカルテをセカンドオピニオンとしてインプラントの症例が多い歯科医院に行き、相談をします。歯科医師同士なので、積極的に失敗について語らないかもしれませんので、その際は再治療の方法を聞いてください。
治療の不備が特定できれば、歯科医院と相談し、再治療や補償、返金について話をまとめます。医院側も、根拠をもとに冷静に説明すれば対応してくれるケースがあります。
感情的にならず、「何が原因でこうなったのか」を明確にしていくことが重要です。
難色を示された場合は、消費者センターや歯科医師会に相談をすることもできますが、両方の組織ともに強制力はないので、最終的には裁判をすることになります。しかし、裁判の場合は手続きに時間がかかり、費用も発生するので、ADR(裁判外紛争解決手続)を利用すれば、裁判より時間・費用の負担を抑えた合意形成が期待できます。弁護士会の仲裁センター等が窓口です。
インプラントトラブルによる訴訟は起こっています。事例をいくつか挙げますと、
訴訟に発展するケースでは、術前説明(インフォームド・コンセント)の不足が争点となることが多いです。これらは重大な医療過誤ですが、小さなことでも不具合を感じたら、歯科医院に申し出て、セカンドオピニオンを聞いてみましょう。
歯科医師も人間であり、失敗することも、失敗を誤魔化すこともあります。治療面も費用面も納得できるようにしてください。繰り返しの注意点になりますが、感情的に歯科医師と交渉するのは控えてください。あなたに非がなくても、「クレーマー」として扱われてしまうことがあります。昨今、事業者側では「カスタマーハラスメント」についての告知がなされているので、誤解されてしまうと話の進展が遅れてしまいます。
訴訟は最終手段とも言えるので、話し合いが基本的なスタンスになります。
インプラントが失敗した後に再治療を行う場合、初回より難易度が上がります。
再治療では、CT診断・シミュレーション・ガイド手術など、より慎重なプランニングが不可欠です。
また、インプラントではなく入れ歯やブリッジを選択した方がよい場合もあります。
無理に再埋入を希望せず、補綴専門医や口腔外科医と相談のうえ、最適な方法を選びましょう。
その際、入れ歯という選択肢もあります。入れ歯に関してはこちらを参考にしてください。
インプラントの成功率を高めるためには、患者様自身が正しい知識を持つことが大切です。
インプラントは外科と補綴の両方の知識が必要です。
インプラント専門医・補綴専門医・口腔外科医など、実績と専門性を確認しましょう。
肉眼では見えない微細なズレも、マイクロスコープであれば正確に補正できます。
CTによる立体的な診断は、神経や骨量を正確に把握するために必須です。
「完璧に成功する」「一生使える」といった説明しかない場合は注意が必要です。
リスク・費用・メインテナンス・保証内容をすべて明示してくれる医院を選びましょう。
治療後も3〜6ヶ月ごとの定期検診とプロフェッショナルクリーニングが欠かせません。
日常のブラッシングやフロス、禁煙も成功のカギです。
最終的には治療を担当する歯科医師への信頼によるところが大きいと言えます。
インプラント治療は、適切な診断・手術・メインテナンスがそろって初めて成功します。
失敗した場合でも、早期に対応すれば再治療によって改善できることも多くあります。
大切なのは、「なぜ失敗したのか」原因を明確にすること。
そして、再び同じ結果を繰り返さないために、専門性の高い歯科医師に相談することです。
くろさき歯科では、補綴の専門医がインプラント治療後の噛み合わせや入れ歯の再治療にも対応しています。
「インプラントが合わない」「再治療が不安」という方は、一度ご相談ください。
Q. インプラントの失敗率はどのくらい?
A. 条件や術式で異なりますが、初期固定や衛生管理が適切な場合は成功率が高いとされています。喫煙・糖尿病・強い歯ぎしりはリスクを上げます。
Q. 返金や無料再治療は受けられますか?
A. 保証条件に依存します。保証期間・適用外条件(喫煙・メンテ不履行など)を同意書で確認してください。
Q. 周囲炎のセルフチェック方法は?
A. 出血・腫れ・膿・口臭・触ると痛いは要注意です。自己判断でブラシ圧を上げず、早期受診をおすすめします。
Q. MRIは受けられますか?
A. 多くのチタン製インプラントはMRI対応ですが、医療機関へ必ず申告してください。
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